アフィリエイトメディア運営者にとって、特別単価交渉は報酬を最大化するための重要なステップです。しかし、
- どのように特別単価交渉を進めれば良いのか、
- 広告主にとってもメディアにとっても話が通しやすい交渉とは何か
- また、どのような条件が揃っていれば成功しやすいのか
について悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、特別単価交渉とは何か、その基本的な概念から、企業側の視点、具体的な交渉方法、そして運用面での工夫について解説していきます。
この記事の著者は元広告主側でアフィリエイト広告の運用を行い、かつSEOアフィリエイトメディアを運用している人間のため、なるべく中立的に両方の視点から執筆していきたいと思います。
特別単価交渉とは何か?その基本的な仕組み
特別単価交渉とは、アフィリエイトにおける報酬単価や承認率を調整するための交渉です。これには、以下2つがあります。
- 発生単価を調整するもの
- 承認率を調整するもの
発生単価とは、ユーザーがアクション(購入や申し込みなど)を行った際に支払われる報酬のことです。
承認率とは、そのアクションが広告主に認められて報酬が支払われる確率のことです。
例えば、転職エージェントの場合、1件送客すると1万円, 100件送客して50件承認された場合、承認率は50%となります。
特別単価交渉に成功すれば、メディア運営者はより高い報酬を得ることが可能になります。
企業はどうやってアフィリエイトの単価を設定するのか?
大前提、広告を出稿する企業である広告主(以後広告主)はどのようにアフィリエイトの単価を設定しているのでしょう。まずアフィリエイターへかけられる単価はどのように決まるのか見ていきましょう。
自社のLTV(ライフタイムバリュー)から計算する方法
アフィリエイトで単価を設定する場合、1件ユーザーを獲得した際の将来的な利益(LTV)を算出し、そこから原価(COST)を引いた値を出します。そして、それに対して広告費比率(ROAS)を決めていきます。
例えば、100円の駄菓子があり、原価が10円だとします。そして流通に40円かかると、実際の利益は50円になります。広告比率が50%だとすると、1件の購入にかけられる金額=CPA=Cost Per Aquisitionは25円になります。(=広告費抜きの利益も25円になります)
つまり、駄菓子1つに対してかけられる広告費は25円が限界の金額となります。(これを限界CPAと呼びます)
こんな感じで、まず1送客に対してかけられる広告費=CPAが決まります。
次に、その広告費のうち、代理店側に支払う手数料が存在します。
ASPだと一般的には20-30%が手数料となります。そのため、このパーセンテージを引いた金額がアフィリエイター向けのCPAとなります。
さきほどの駄菓子を例にすると、例えばASPの手数料が30%の場合、25円 * (100% – 代理店報酬率30%) = 25% * 70% = 17.5円がアフィリエイター側の広告費となります。
競合の出稿状況から計算する方法
もう一つが、他社競合の広告費を参考にするケースです。例えばアフィリエイトで、競合が10000円で出稿しているのにもかかわらず、100円でアフィリエイトの単価を設定しても、アフィリエイターが掲載してくれません。
なので、自社の商品で利益が出るか出ないかとは別の軸で、競合の広告費に競り負けないように広告費を出すケースもあります。
業界によって、かけられるアフィリエイトの単価は決まっている
ポイントは、業界・商材ごとにアフィリエイトの単価相場が決まっているということです。
例えば、医師の転職においては、人材紹介エージェントは年収の30%程度を報酬として受け取ります。その場合、1人の転職が成功した際の仲介手数料が年収が1000万円ですと、300万円に達することがあるため、企業は申込時点で6万〜7万円の広告費を支払うことが可能です。
しかし、クラウドソーシングのように、仕事の発注の手数料モデルで、かつ発注単価が低いような場合は、あまり広告費は出せません。例えば、クラウドソーシングにたいしてライターを送客する場合、1件の記事の報酬が7000円だとして、手数料が3%とすると、210円が売上です。そこからソフトウェア開発原価や販売管理費などを引いていくと、広告費としてかけられる金額はかなり少ないのです。(※リテンション回数などは説明をシンプルにするために考慮しないものとします)
よって上の例のように、そもそも特別単価交渉の余地は業界の相場によって決まっていることを把握しておくとよいでしょう。
業界相場を把握するためにASPに聞くとよい
業界全体の単価相場を把握するためには、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)を活用することが効果的です。ASPに問い合わせることで、業界内の標準的な単価や許容CPAを確認できます。
ただし、ASPによっては業界全体をカバーしていない場合もあるため、複数のASPと提携し、それぞれの価格相場を把握することが重要です。特に、その業界に強いASPから情報を得ることで、正確な相場を知ることができます。また、信頼できるASPを選び、適切な情報を基に交渉を進めることが特別単価交渉を成功させる鍵となります。
特別単価交渉を成功させるための具体的なアプローチ
特別単価交渉を成功させるためには、いくつかの重要なアプローチがあります。
- 送客数を増やす
- ASPの担当者をつける
- 広告主の特別単価テーブルをヒアリングする
- 送客強化アプローチ / オークションアプローチを利用して特別単価交渉を行う
送客数を増やす
有力な媒体に関しては、ASPはメディア担当者を設置し、特別単価交渉リソースをさいてくれます。ただし、すでに件数が出ている媒体でない限りはリソースをさいてくれません。送客件数が増えてきたタイミングで、ASPにお問い合わせを行うことで、担当者をつけてくれる可能性が高いです。担当者をつけると交渉や広告主の出稿状況などをヒアリングしてくれます。
ASPの担当者をつける
ある程度送客数が増えてくると、ASPから自社メディアのフォームに対して営業がきます。もし来ない場合、ASPのお問合せフォームから連絡してみると高確率で担当者をつけてくれます。
Chatworkなどのコミュニケーションツールを利用するケースが多いので、アカウント登録しておくことをおすすめします。
広告主の特別単価テーブルをヒアリングする
次に、現時点で特別単価交渉をしたいカテゴリの広告主全体の特別単価テーブルをヒアリングしておくとよいでしょう。特別単価テーブルとは、どういう条件であれば、どのくらい単価を出せるか、という条件表となります。
広告主によって用意しているケースもあればないケースもあるので、注意が必要です。
また、業界の全体感を把握する上で、複数のASPの担当者をつけておくとよいでしょう。扱う案件が特定のASPに集中している場合は特に気にしなくても良いのですが、ASPによって単価が大きく異なるケースがあります。これは広告主によって、ASPの単価を変えていたりするケースが多いからです。
送客強化アプローチ / オークションアプローチを利用して特別単価交渉を行う
次に、送客強化を行うために、具体的なアプローチを提案します。
送客強化アプローチ
送客強化アプローチに関しては、特定の記事の掲載面にサービスを紹介することで、単価を上げてもらう交渉となります。基本的にはすでに検索上位されている記事に対して、掲載するという形がよいです。新規で記事を執筆することを条件にする場合、広告主側からすると順位が上がるかどうか不確定なため、稟議が通りづらいです。
このアプローチは、メディア側からすると相当工数もかかりますし、広告主側もSEOについてあまり詳しくない可能性があり、絵に描いた餅のようなシミュレーションを出さないといけないので、どちらかというとこれから解説する後者のアプローチを利用すると良いと思います。
オークションアプローチ
もう一つのアプローチが、オークションアプローチです。これは競合の単価が特別単価交渉したい企業よりも上の場合に利用できる交渉方法となります。すでに掲載している面のリプレイスを行わず、貴社に送客を維持したいので、単価を上げて欲しい、というアプローチとなります。
特にすでにかなり件数が獲得できている状況であれば、こちらの交渉方法を利用した方がよいでしょう。特別単価交渉にかかる工数も少なくて済みますし、相手側のサンクコストが働き、稟議も通りやすいです。
十分な送客件数を確保しつつ、広告主側もあなたのメディアに集客が依存している状態であれば、交渉力はメディア側の方が上になります。そのため、まずは大幅に獲得件数を上げていくところから始めて、オークションアプローチで交渉を進めるとよいでしょう。
広告主側がなぜ特別単価を付与するのか
普通に考えると、広告主にとって「特別単価を上げる」=「利益を圧迫する」行為なので、広告主はできれば特別単価など付与せず、安い単価で送客してもらいたいと考えます。それでは、なぜ広告主は特別単価を付与するのでしょうか。
大きく分けると、以下3つがあります。
- 競合との単価競争に負けて、申込数を増やせなくなるから
- アフィリエイト単体でのCPAの高騰は許容し、チャネル全体でのCPAで合わせにいくから
- 利益率が圧迫しても数で利益を回収しにいくから
競合との単価競争に負けて、申込数を増やせないから
一つは競合の出稿状況に合わせて単価を調整しないと、アフィリエイトのチャネル経由でユーザー獲得ができなくなるからです。ネガティブな合理性が働くからですね。
アフィリエイト単体でのCPAの高騰は許容し、チャネル全体でのCPAで合わせにいくから
もう一つは、アフィリエイトのチャネル単体で見た時にCPAが高騰してしまったとしても、オーガニック(自然流入)などを見た際に全体でCPAが調整できる可能性があるからです。そのため、ポジティブな合理性が働くケースです。
私の知っている範囲ですと、過去に某プログラミングスクールが相場最大でも30000円の成果報酬のところを、一気に認知をとりにいくために単価50000円ほどで設定しているケースがありました。これは短期で見ると利益率が悪化するのですが、認知を獲得することで長期でCPAを抑えにいく戦略だからです。(こういう場合、M&Aで親会社が買収するケースや、株式による資金調達で一気にグロースをかけるタイミングで行われやすいです)
利益率が圧迫しても数で利益を回収しにいくから
最後に、CPA高騰で利益率が圧迫したとしても、数が取れるので利益自体は増えるから、というケースもあります。
例えばさきほどの駄菓子を例にしてみましょう。広告費25円までかけて、利益25円得られるようなCPAだったとします。
この場合、100件獲得すれば、25円 * 100件で2500円が利益となります。
一方で、広告費比率を下げて、50%だったものを10%にすると、広告費は1件あたり90円までかけられるようになります。一方で利益は10円になります。
この場合、アフィリエイト広告を行った結果、単価を大幅に上げられるようになったので、10000件獲得できるようになると、利益としては 10円 * 10000件 = 100,000円となります。
このように、利益率が圧迫したとしても数を取れば利益を増やせる場合は、CPAを上げて数をとりにいく戦略をとりにいくこともあるのです。
広告主が特別単価を付与しやすい状況を作るには?
特別単価交渉を有利に進めるためには、以下2つが必要です。
- 送客の数を担保する:リードの送客数を算出します
- 送客の質を担保する:実際の承認率を算出します
前者については難しくないはずなので、後者の送客の質について解説します。
送客の質
送客の質とは、「広告主が有効と認めるリードを送客できているか」を示します。より具体的に言うと、「広告主の指定した成果地点で、その成果対象となるリードを送客しているか」が質として判定されます。
例えば、転職エージェントの送客を考えてみましょう。
転職エージェントのビジネスモデルは、転職した人の現在年収 * 仲介手数料30%の成果報酬になります。
転職エージェントの場合、「転職の決定数」が最重要の数値となります(=実際にお金が発生する数字)
その場合、上記のようなファネルを経て、下からよりお金につながる成果地点となります。
- 会員登録
- スキルシート提出
- 面談実施
- 企業面談実施
- 転職決定
広告主の転職エージェントでは、転職決定まで行われない限りは収益が発生しません。そのため、より転職の角度の高いリードを送客してくれるメディアほど、特別単価を付与してくれやすいです。
一般的には、転職エージェントであれば「スキルシート提出/面談」が成果地点になるケースが多いです。
その場合、エージェントへのスキルシート提出が行われれば、成果として承認されます。
例えば、ASP上の計測上の成果地点が会員登録で、承認ポイントがスキルシート提出だとしましょう。
その場合、例えば会員登録者数が10件で、スキルシート提出が5件の場合、承認率は50%となります。
送客の質を改善するには?
それでは、具体的に送客の質を改善する方法について解説します。
まず、送客の質を規定する要素としては、以下2つがあります。
- 掲載する記事のキーワードを調整する
- 掲載する記事での商材の訴求を調整する
順に解説します。
掲載する記事のキーワードを調整する
広告主が必要としているリードが送客できるようなキーワードに、案件が掲載されているか確認します。特に、ターゲット外のユーザーを送客するキーワードに掲載すると、高い確率で承認されないケースが多いです。
弊社の記事ごとのアフィリエイトメディアの売上を計測できるMedia Analyticsを利用した事例をご紹介します。
例えば、エンジニア特化のフリーランスエージェントへ送客するとします。この場合、「エンジニア 副業 未経験」といったキーワードでフリーランスエージェントへ送客すると、否認される可能性が高いです。理由としては、フリーランスエージェントではエンジニアは経験年数が最低でも2-3年はないと即戦力として活用できないためです。そのため、弊社ではそのような否認率が高い記事から対象商材を外すことで、リードの質を担保するようにしています。
掲載する記事での商材の訴求を調整する
広告主が期待するリードを送客できるように、承認条件に合致するような訴求を行います。同じ顧客層でも、顧客の態度が異なると、成果が承認されないケースがあります。
例えば、転職エージェントに送客する際に、「自己分析ツール」というキーワードで、「自己分析をしたい方は、xxx診断を受けてください」というCTAで転職エージェントへ送客すると、転職意欲のない顧客層まで送客してしまうため、広告主としてはリードの質が下がってしまいます。
そのため、例えば「転職を検討している方は、xxx診断を受けた上で自己分析を一緒にキャリアアドバイザーと行なってみましょう」といったように、転職を前提にした送客を行うことで、質の改善を行うことができます。
送客の質をどう計測したらいい?
それでは、どのようにしたら計測すればよいでしょう。方法としては以下の通りです。
- コンバージョンのリファラを取得できるようにする
- 記事ごとに承認率を算出する
コンバージョンのリファラを取得できるようにする
まずどの記事からCVが発生しているか把握する必要があります。その場合、コンバージョンのリファラが取得できると、計測することが可能となります。
記事ごとに承認率を算出する
上記で取得したコンバージョンのリファラ付きCSVをスプレッドシートに吐き出し、リファラごとにユニークな形で集計し、承認率を計算します。こちらは手動で行うと膨大な工数がかかりますが、弊社のMedia Analyticsを利用すると、簡単に一括で集計することができます。もしご興味がある方はぜひ無料トライアルをお願いいたします。